こんにちは技術者けんです。前回までベアリングの外し方の記事を書いてきましたが、今回はベアリングの取り付けに関する記事です。ベアリングを取り付ける時に注意する点やコツなど解説していきます。
ベアリングの外し方はこちら
まずは前回のベアリングを取り外す記事2つをご紹介しておきます。
まずはベアリングとシャフトが外れない場合の記事です。
よくある方法など詳しく解説しているのでシャフトとベアリングが外れなかった経験がある方はぜひ一読ください!
次にベアリングとケースが外れない場合の記事です。
ベアリング交換で1番最悪な内輪と外輪が分かれてしまって外輪が取り残された場合の対処法もあります。読んでおいて損はありません。ぜひ目を通してみて下さい!
ベアリングの取り付けの注意点
ベアリングの取り付けには注意点がいくつかあります。
注意点を守らずに取り付けるとせっかくベアリング交換してもベアリングの寿命が縮んだり、取り付け直後からゴリゴリ感が出たりします。
気をつけて作業することで防げる事も多いので注意点を知っておいて損はありません。
主な注意点は以下の4つです。順番に解説していきます。
- 出来る限りベアリングに負担をかけない
- ベアリングを先にシャフトに取り付けるかケースに取り付けるか
- 力を加える場所を注意する
- 絶対にシールドを叩かない
出来るだけベアリングに負担をかけない
これが1番大事なことですが心構え的な話になります。ベアリングの取り付けはいかに負担をかけずに取り付けるかが最重要です。そのためにどうやって取り付けるか、どこを叩くか注意する必要があります。
まずはベアリングに出来る限り負担をかけないことを意識して作業に取り掛かりましょう。
シャフトとケースどちらを先に付けるか
ベアリングに負担をかけないためにはシャフトを先に入れるか、ベアリングをケースに先に入れるかでベアリングへの負担が変わってきます。
公差がキツい方を先に取り付けるのがベストですが、今回のようにベアリング交換の場合には自分でベアリングを外しているため、細かい公差まで知る必要はないと思います。
ベアリングを外す際に外しにくかった方から取り付けるのがベストです。
シャフトに取り付ける場合
シャフトに取り付ける場合には叩くor油圧で入れるの2種類の方法がありますが、どちらでも注意点は同じです。
まずシャフトの先端をベアリングに入れていくのですがその際にどうも引っかかって入りづらいことがあります。そのような時はほんの少しで良いのでシャフト先端を研磨しましょう。細かい紙やすりで研磨するくらいでも大丈夫です。
シャフトに取り付ける際にはベアリングの内輪の内側とシャフトに摩擦があり、ベアリングが入りにくくなっています。そこで叩くor油圧で入れる訳ですが、可能であれば内輪を叩くor油圧で押し込んでいきたいです。
次に内輪に合う適当な筒などを用意して、その筒を叩きます。そうすることで内輪に出来るだけ均等な力を加えながらベアリングを取り付けることが出来ます。つまり外輪に一切負担をかけずに取り付けることが出来ます。
また叩く際にはこじるのを防ぐために叩く位置を変えながら叩く必要があります。1箇所叩いたら別の箇所、また別の箇所と叩いていくことでベアリングがこじらずにまっすぐ入っていきやすいです。
これまでと逆に悪い例として、外輪を叩くor油圧で押すと、外輪の力がまずベアリングの玉に加わりその後内輪に力が加わるためベアリング内部で玉や溝が傷がついたり、劣化を早めます。内輪に直接力を加えてベアリングを取り付けるのが理想的です。
ケースに取り付ける場合
ケースに取り付ける場合は先述のシャフトに取り付ける時と逆に外輪を叩くor油圧で押し込むことで取り付けます。
ベアリングをケースに入れる際にはベアリングの外輪の外側とケースとの間に摩擦があるため外輪に直接力を加えることで入れやすくなります。
また内輪を叩いてしまうとシャフトを取り付ける時と逆に内輪→玉→外輪→ケースと力がかかるため玉や溝に負担を与えてしまいます。
ベアリングを先に取り付ける場合は外輪に力を加えるように注意しましょう。
ちょっとしたコツですが、ちょうどいい太さの叩く棒などがない場合には、ベアリング交換で先に外したベアリングの外輪を当てて叩くこともあります。
同じ寸法なので均等に力を加えるには1番良いとも言えます。外した外輪がまた抜けなくなると困るので表面を少し研磨して径を小さくしてから使うのがポイントです。普段からそこまですることは珍しいですが重要な箇所で交換が大変な場所などベアリング交換を頻繁にしたくない場面などでは上記のように慎重に作業を行うこともあります。
またベアリングをケースに入れる場合に叩く際は叩く箇所を変えながらこじらないように叩くことでベアリングやケースへの負担を増やさずに済みます。
絶対にシールドを叩かない
ベアリングを取り付ける際に絶対にやってはいけないことがベアリングのシールドを叩いてしまうことです。
ベアリングは内輪・外輪・玉・保持器とシールドで構成されていて、内輪と外輪にフタがされているようなベアリングがシールド付きのベアリングになります。
ベアリングのシールドとは内輪と外輪の間にあるフタのようなイメージです。シールドにもいくつか種類がありゴムのシールドの場合や金属のシールドの場合があります。
シールドの役割は玉や保持器の間にゴミが入ったり、錆が出るのを防ぐ意味があります。
このシールド叩いてしまったりして変形してしまうと、防水性や防塵性が低下するだけでなく、変形したシールドそのものが負荷となり玉が回りづらくなります。
結果ベアリングの寿命が大幅に下がり機械に不具合が生じることに繋がります。
もしもベアリング交換の際にシールドを変形させてしまった場合には、新しいベアリングに交換しましょう。
簡単に交換できる部分に用いられている場合などはしばらくは使えるかもしれませんが、ロックしたベアリングとシャフトが滑りシャフトが瘦せてしまうなどの他の不具合に繋がります。もったいないと思わずに新しいベアリングを使うことをお勧めします。
最後は叩くしかない場合も
シャフトやケースにベアリングを取り付けたあとは最終的に叩き入れるしかない場合もあります。
その前にうまく取り付けられる場合もあります。例えばベアリングとシャフトを組んで、その後ケースに取り付ける時はシャフトが1本物であったり、段付きのシャフトの外径がベアリングの外輪より細い場合にはベアリングの外輪を叩くor油圧で入れることが可能です。
適度な筒などがあれば外輪に力を加えて取り付けることで最後までベアリングに負担をかけずに取り付けることも出来ます。
また以下のような先に取り付けたシャフトが太い場合には最後は叩くしかないでしょう。
どうしても叩いて入れる際はベアリングを取り付けられる最低限の力で叩くことで出来るだけ負担を少なく取り付けられます。思いっきり叩かないように注意しましょう。
まとめ
ベアリングの取り付け方法の注意点をおさらいしておきます。
- 出来る限りベアリングに負担をかけない
- シャフトが先かケースが先か、基本的には外しにくかった方を先に取り付ける
- 力を加える場所を注意する、内輪に力を加えるのか外輪に力を加えるのか
- 絶対にシールドを叩かない
以上のことを注意しながらベアリングの取り付けを行うことで寿命を縮めることなくベアリング交換を完了することが出来ます。
前回からのベアリングを外す記事を読んで、今回の取り付ける記事を読んでくれたあなたはもうベアリング交換の基礎知識は完璧です。
あとは実践を重ねて鍛えていって下さいね!
最後にもう一度ベアリングを外す方法を貼っておきますので気になる方は復習してみてくださいね↓