こんにちは、技術者けんです。今回は自己保持回路について実際に配線をしながら解説していきます。
この記事では自己保持回路って聞いた事はあるけど実際のところよく分からんって人や、イメージは掴めたけど、さてどうやって配線するの?って人のために解説していきます。
自己保持回路とは?
まず、自己保持回路とはなんなのか?という基礎の部分を確認しておきましょう。
自己保持回路は1度の信号でずっと出力を出せる回路になります。よくある例え話なのが、スイッチを一度押すとランプを点きっぱなしに出来る回路ということになります。
実務ではランプの代わりにモーターを動かしたり、電磁弁を動作させたりすることに使用します。
電気の回路のことを学んでいく上で自己保持回路は非常に非常に重要で基礎で基本的なことなのでしっかり理解して配線まで出来るようになりましょう。
自己保持回路は水泳でいうと水着を着るくらい重要で基礎的なことです。野球でいうとグローブをはめることくらい基礎的です。サッカーでいうとボールを準備するくらい重要です。ピアノでいうと…もうやめときます。
回路
さっそくですが、完成された自己保持回路の実際の回路を見てみましょう。
これを見ても私も初心者の頃は意味がわからないと思いましたので全く焦らなくても大丈夫です。実際に配線をしながらこの回路を完成させることにしましょう。
実際の配線
今回使用する部品はスイッチ①(a接点)とスイッチ②(b接点)とリレーとランプです。電源としてDC24V用のパワーサプライも使用します。
今回はスイッチ①を1度押すとリレーがONして、スイッチ②を押すとリレーがOFFする自己保持回路を作っていきましょう。
リレーをONする
まずはリレーのみ接続してみましょう。今回はDC24Vのリレーを用いるため極性があります。直流電流は±を間違えずに接続する必要があります。
この状態でパワーサプライの1次側(100V側)をコンセントに挿すとリレーがONしっ放しになります。
リレーについてよく分からない方は下記の記事でリレーについて紹介していますのでご覧くださいし↓
スイッチ①を押したらリレーをONする
コンセントに挿したら一生リレーがONしっ放しでは何も出来ないのでここでスイッチ①を使います。スイッチ①はa接点なのでボタンを押している間だけ電気が流れます。a接点のことをNO(ノーマルオープン)と呼ぶこともあります。通常状態で電気が通らない=接点が開いている(オープンしている)という意味です。
スイッチ①を押したらリレーをずっとONする
さてここが一番重要な自己保持回路の肝となる部分です。先ほどまでのスイッチ①を接続した回路にオレンジの配線と黄色の配線を追加しました。
オレンジの線はSW①とリレーの⑤に繋ぎ、黄色の線はリレー⑨と0V側(マイナス側)に接続します。オレンジと黄色はリレーのa接点に接続されたことになります。
スイッチ①を押すことでリレーがONします。リレーがONするとa接点が閉じるため、リレーの番号⑤と⑨が接触し通電します。リレーのa接点が閉じたのでスイッチ①を離しても自分の接点を用いた経路でリレーはONしっ放しになります。
この状態を自己保持している状態と言います。電気はパワーサプライのマイナス側から見ていくと、パワーサプライ→リレーの⑨→リレーの⑤→スイッチ①の右側の端子→リレーの⑬→リレーの⑭→パワーサプライという順で繋がっています。
パワーサプライからスイッチ①の左側までの黒い線は接続はされていますが、実際に電気は流れていません。スイッチ①が開いているためパワーサプライからスイッチ①の左側まで繋がってはいますが、電気の流れはありません。
スイッチ②を押したらリレーがOFFする
自己保持した状態ではスイッチ①を押した後に手を離してもリレーはONしっ放しになります。しかし機械や設備を制御するには一度リレーがONしたらずっとONしっ放しでは制御出来ません。
そこで自己保持回路を解除する機能が必要です。
今回はスイッチ②を自己保持を解除するための機能としてb接点のスイッチを使用します。スイッチの側面にはNC(ノーマルクローズ)の記載があります。
IDEC社のスイッチは青色がa接点、赤色がb接点です。一目で分かりやすくて良いですね!
回路のイメージ図で表すと上記のようになります。スイッチ②を追加することで自己保持されたリレーへの電気を切ることが出来ます。再度自己保持したい時にはスイッチ①を押すと自己保持することが出来ます。
これが1番簡単な自己保持回路の基本系になります。実際の機械ではスイッチ①の代わりにセンサーの入力を用いていたり、スイッチ②の代わりに別のリレーを用いて制御していたりします。
ランプを接続する
ここまでの自己保持回路を用いてランプを点灯させてみましょう。先程のリレーの接点の8番と12番を用います。8番と12番はa接点になっているのでリレーがONしている間はつながる接点です。
パワーサプライから青色の線をリレーの12番に、リレーの8番から緑色の線をランプに、ランプからパワーサプライまで茶色の線を追加しています。
※今回はパワーサプライのマイナス側に3本の線が接続されましたが、通常1つの端子台に線は2本までが常識です。
この状態でスイッチ①を押すとランプが点灯します。ランプ点灯中にスイッチ②を押すとランプを消すことが出来ます。
今回は24Vのランプを接続しましたが、100Vの電源につなげば100Vの機器、例えばランプやファンなど自己保持することが可能です。
シーケンサーバージョン
ここまでのお話では実際にリレーを用いて自己保持回路を作ってきました。リレーやタイマーを複数個使って回路を作るのはなかなか手間がかかり大変です。そこでリレー制御の代わりに発明されたのがシーケンサーになります。
シーケンサーではプログラムを書くことで実際の配線の手間が省けることや、変更が容易であったりとメリットが多いです。
ここではシーケンサーで自己保持回路を作ったラダー図を載せておきます。ふーん、なるほどと思っていただければ良いかと思います。
ふーん、なるほど。
使用例
自己保持回路の使用例と言うのは意外と難しいものです。というのも、シーケンサーのプログラムの中などでは嫌と言うほど自己保持回路が使われていたりするためです。
今回リレーによる簡単な自己保持回路のみの使用例をいくつか挙げてみたいと思います。
モーターのONOFF
自己保持回路はモーターの始動や停止にもよく用いられます。例えば1つ目のセンサーが反応してから自己保持を開始し、2つ目のセンサーが反応したらモーターが止まるような回路です。
自己保持用のリレーの接点を使ってマグネットスイッチやインバーターを起動して動作しています。
エラー時のランプ
機械にエラーが発生したら自己保持するようにリレーで回路を組むことも出来ます。
エラーが発生すると同時に自己保持を開始し、再度運転状態になると自己保持が切れるような仕組みです。
私も実際にコレでエラーによる停止時間を測定していました。ポイントは機械に付いている普通の停止ボタンを押しても停止時間を測定せずにエラーによる停止時間を測ることで活用しています。
センサーのチャタリング防止
自己保持回路とタイマーを用いてセンサーのチャタリングを安定させることも可能です。チャタリングとは、短い間に何度もセンサーが入切してしまうような現象を言います。それにより機械の誤動作などが発生することがあります。
自己保持回路とタイマーを用いて1度センサーがONしたら数秒間はONしっぱなしのような状況を自己保持回路で作ることも出来ます。
エアブロー
チャタリング防止と似ていますが、エアブローに自己保持回路を用いることも出来ます。
例えばワークが流れてきたら何秒間かエアーを吹き付けるような仕組みを作ることも出来ます。ワークのゴミや水滴を飛ばしたり、乾燥させる時に用いたり出来ます。
まとめ
自己保持回路について理解が進みましたでしょうか?
電気回路を勉強していく上で自己保持回路は基礎の基礎ですのでしっかり理解しておくようにしましょう。
今回最後まで読んで頂いた皆さんは少しは理解が出来たと思います、次は自分の手を動かして自己保持回路を作ってみましょう。