こんにちは技術者けんです。今回は皆さん良くお目にかかる三菱のインバータについてです。三菱のインバーターは多く使われていますが、700シリーズが廃盤になり、800シリーズが現行として発売されています。
現在700シリーズを使用しているけど、壊れたので800シリーズへ交換したい・壊れる前に交換したい、そんな方の参考になると思います。
インバータ交換の流れ
インバータを交換する際に必要な手順や流れを確認しておきましょう。インバータ交換と一言で言ってもするべきことがいくつかあります。
交換前の動作確認
まずは交換前の動作確認をしましょう。ファンやポンプ・コンベアでの使用であればモーターの回転方向を確認しましょう。コンベアなどは動き出し・停止位置なども確認しておきましょう。
パラメータを控える
後述する手動での方法か、ソフトを用いてのパラメータの読出しを行いましょう。
機器の交換
ブレーカーを落として実際に交換しましょう。配線が少し変更になります。
パラメータの書き込み
前もって読み出しておいたパラメータを手動かソフトを用いて書き込みましょう。
動作確認
機器の交換が終わり、パラメータを書き込めたら動作確認をして終了です。
パラメータを読出し、インバータを交換しパラメータを書き込む、基本的には3ステップの作業です。では次にそれぞれの作業を確認していきましょう。
インバータのパラメータの読出し
交換前の動作確認が出来たら、パラメータの読出しです。
手動で行う
手動で行う場合はインバータのパラメータを一つ一つ確認してメモしていく作業となります。
インバータの操作方法
インバータの デジタル表示を確認していく作業になります。

MODEのボタンを押してP.0が表示される状態にします。次にSETを1度押すと「0」のパラメータが表示されます。
もう一度SETを押すと「P.1」となり、再度SETを押すと「1」のパラメータが表示されます。基本的には上記の操作をパラメータの最後まで繰り返すことになります。「P.」のパラメータ選択の状態で、回転スイッチ(Mダイヤルと呼ぶ!)を回すと任意のパラメータまで移動することが出来ます。
700シリーズインバータに付属してくる取説にはパラメータ一覧があります。メモを取る際に活用しましょう!手元になければ急ぎでなければ印刷しておきましょう。
インバータ専用ソフトを用いて行う
三菱のインバータでは「FR Configurator2」を使用してパラメータの読出し、書き込み、後述の変換が出来ます。
バージョンが古いとE800やD800シリーズに対応していなかったりしますので、最新版をダウンロード・アップデートして使いましょう。
無償版でもパラメータの読み書きやコンバートが可能です。
接続
基本的にはE700シリーズではUSBのmini-Bケーブルをインバータへ挿して、もう片方は自分のPCへ繋ぎます。
D700・F700シリーズの場合はRS-485通信ですがLANケーブルのような挿し口に接続します。専用のケーブルが必要になり、ドライバーもインストールする必要があります。
接続箇所一覧を表示しておきます。F700シリーズではパラメータユニットを取り外すことになります。対角のネジ2本を緩めてユニットを外しますが運転中に外しても問題なしです。

上の写真にはありませんが、D800シリーズにはタイプCのケーブルで接続出来ます。
推奨通信ケーブル ダイヤトレンド「DINV-U4」RS-485⇔USBコンバータ
読出し
ケーブルを接続出来たらまずはFR Configurator2を開きます。
- プロジェクトの新規作成を行います

- 自動認識で接続されているインバータを探します


- 接続出来たらオンラインにします

- パラメータリストを選び、一括読出を押します

- パラメータの枠に設定値が読み出せればOK 設定が変更されている箇所が青色になります
- 700シリーズのパラメータを保存します

コンバート(変換)
先ほど保存したパラメータは700シリーズ用のパラメータになります。
これを800シリーズで書き込めるように変換することをコンバートと言います。
パラメータを読出し保存したタイミングでコンバートを実施してしまいましょう。
- パラメータのコンバートを選択する

- 保存しておいた変換したいパラメータのファイルを開く

- 変換を選択し問題なければ実行する


- 変換された800用パラメータを保存する

ここまでで、交換前のパラメータと交換後に書き込むパラメータが保存されました。交換前のパラメータを保存しない方法もありますが、万が一の時のために交換前のパラメータも保存をオススメします!
インバータ交換の方法(取付・配線)
パラメータの準備が出来たらインバータの交換です。必ずブレーカーを落として電圧が来ていないことを確認してから作業しましょう。
電気工事士や低圧電気取扱の教育を受けた人に頼みましょう。
取付方法
同じ容量のインバータの700から800への更新では取付の寸法が変わらないものも多いですが、取付位置が変わることもあります。三菱のサイトで確認しましょう。
配線方法

一次側(電源側)と二次側(モーター側)の主回路の配線は変わりません。
外部運転や異常の配線が少し変わっています。配線の位置が変わる為700シリーズの信号線の配線長さがギリギリの場合には注意が必要です。
また信号線の端子台がネジではなく差込になります。配線をよじるだけでも使用出来ますが可能であればブレード端子を圧着しましょう。
また渡り線が足りなく場合があります。必要に応じて配線を見直しましょう。
インバータにパラメータを書き込む方法
インバータの取付・配線が終わったらパラメータの書き込みです。読出しの時と同様に手でパラメータを変更していくか、FR Configurator2を使用して書き込むかの2通りの方法があります。
手動でパラメータを書き込む方法
まず、インバータをパラメータを変更できる状態にする必要があります。Pr.77がパラメータの変更出来るかどうかの設定になります。
0:パラメータ変更不可
1:停止中はパラメータ変更可
2:パラメータ変更可
特に問題がなければ、Pr.77を2へ変更しましょう。
また初期状態でPr.77が選択出来ない場合があります。その場合は変更出来るパラメータがよく使うパラメータのみに制限されていることがあります。その際はPr.160を変更しましょう。
手動でパラメータを変更する方法は、MODEを押してPr.0の状態にします。その状態でSETを押すとPr.0の現在の設定値が確認出来ます。変更したい値へダイヤルを回して再度SETを押すと数値が点滅し、パラメータが変更出来ます。もう一度SETを押すと点滅が終了し、次のパラメータの変更が出来ます。Pr.の状態でダイヤルを回すと任意のパラメータまで移動することが出来ます。

インバータ専用ソフトを使う
FR Configurator2を使用してパラメータを書き込みます。
まずは交換後のインバータと接続します。次にコンバートし、800シリーズ用に変換しておいたパラメータをファイルから開きます。
インバータのパラメータの77番は初期値でゼロになっています。このまま書き込みをすると書き込みが出来ません。パラメータの77を2番に変更しましょう。Pr.77を選択しクリックして茶色になったところで書込みを行います。


パラメータの77番を2へ変更出来たら、一括書込みを実行します。
Pr.570が…と画面が出ますが気にせず「はい」で問題ありません。過負荷などの定格の規格を変更する際に使用します。基本的にインバータの700から800更新では変更することはありません。
一括書込みを実行出来たら、書き込めたかどうか一括読出しをするかどうか確認するポップアップが出ますので、一括読出しを行いましょう。

実際に書き込んだパラメータが読み出すことが出来ればパラメータの書き込み完了となります。
パラメータを書き込めたら、一度電源を切り、少し間をおいて再度電源を投入しましょう。
電源入切を必ず実施しておきましょう。

実体験では電源入切をしないと書き込んだパラメータが反映されないことがありました。また書き込み後のパラメーターリストの表示が設定値が入っている青文字がなくなっている場合書き込みが上手く出来ていない可能性があります。再度Pr.77を確認して一括書き込みしてみましょう。
動作確認
インバータの交換が終わり、パラメータも書き込みが完了したところで動作確認をしましょう。ファンやコンベアなど、回転させてみて実際の動きに問題ないか確認しましょう。
また過負荷など異常を出してみて装置が問題なく停止するか、外部からインバータのリセットが効くかどうかなど動作確認・試運転してみましょう。
おまけ
インバータを700から800シリーズへ交換するとパラメータの1000番台が増えます。パラメータの1006から順にインバータに年月日・時刻を書き込めるようになります。
※インバータの電源を切ると時刻のカウントがストップするため常時インバータに電源が供給されている使い方などで使用出来ます。徐々に時刻がズレていくため見直しが必要となります。
グラフの機能も使えるようになるため、加減速や電流値などが視覚的に分かりやすくなります。
様々な機能を触って知っていきましょう。
まとめ
ここまで三菱のインバータを700シリーズから800シリーズへ交換する方法をお伝えしてきました。
流れはパラメータを読出す・交換する・パラメータを書込むだけです。
ポイントはFR Configurator2の使い方とパラメータ書込み後の電源入切です。
慣れてしまえば難しいことはありません。実際にやってみてインバータ交換のプロになりましょう!