マグネットスイッチ(電磁接触器)とは?仕組みや構造をご紹介!電磁開閉器?呼び方の違いから故障事例まで!

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こんにちは、技術者けんです。今回はマグネットスイッチについての記事になります。マグネットスイッチってどうなってんの?ってところから故障のパターンまで詳しく解説します。なんとなくは知ってるって方も、少しでも詳しくなりたい方は是非最後まで読んでみて下さいね!

今回の記事では主に富士電機のマグネットスイッチにて解説していきます。

マグネットスイッチとは?

いきなりですが、マグネットスイッチとはなんなのかについて見ていきましょう!

マグネットスイッチは電気の力で磁力を起こして電気の経路を入り切りするための機器です。

例えばモーターを動かす時にはONして電気を流す。またヒーターで温度を上げたい時にはONして電気を流す。そのように電気を使いたい時に流すためのスイッチのようなイメージがマグネットスイッチです。

この記事ではマグネットスイッチと呼んでいますが、他にも呼び方があったりします。

  • マグネットスイッチ
  • 電磁接触器
  • マグネットコンタクタ

などメーカーなどによって呼び名が変わることがありますが、意味していることは一緒です。

ただし電磁接触器電磁開閉器は別になります。電磁開閉器はモーターが過負荷などで必要以上に電気が流れた場合に電気を遮断する機能が付いています。勝手に電気を遮断してくれるため電磁接触器の上位が電磁開閉器になるようなイメージでもあります。詳しくは後半で話しましょう。

マグネットスイッチの構造

マグネットスイッチは上から順に(写真左から順に)以下の5つで構成されています。

  • カバー
  • 本体
  • バネ
  • コイル
  • 積層鉄心

それぞれ重要な役割を持っているため簡単に説明していきます。

カバー

カバーがないと実際に電気が流れる接点が丸見えになります。接点の隙間にゴミが入り込むのを防ぐ意味もあります。またカバーには仕様が書かれており、流せる電気の容量などが記載されています

本体

カバーを外すとマグネットスイッチ本体が見えます。カバーを外した状態で斜め上から見ると接点部分が見えます。実際に電気を流す際にこの接点部分が接触して電気の経路が出来ます。接点には固定接点可動接点があり可動接点が上下することで接点が繋がり電気が流れます

バネ

バネは何故必要かというと電気を流さない時には接点を切り離しますが、その際に接点を戻す役目がこのバネになります。

コイル

コイルはマグネットスイッチを動作させるのに重要な役目を担っています。コイルが電気信号を磁力に換えてマグネットスイッチを入り切りします。

積層鉄心

これは何故必要かというとコイルで発生させた磁力を最大化するためにあります。コイルで発生させた磁力は空中では弱いため中に鉄を置いておくことでその鉄が磁化されて磁石の役目を果たします。それなら鉄の塊でも良い気はしますが、鉄の塊ではうず電流などの損失が発生します。そのため効率的に磁力を最大化するために鉄の板を重ねた積層鉄心が用いられます

マグネットスイッチの仕組み

マグネットスイッチがどのように動作するか簡単に言うと、コイルに電気を流すことで磁力が発生し、その磁力によって接点を引き寄せて電気の経路を繋げます

順を追って詳しく説明すると…まずコイルに電気を流します。それによりコイル内に磁力が発生します。(右ネジの法則!とか聞いたことありますよね?!電気を流すと磁力が発生するとかいうアレです!)

コイルはDC24V用、AC100V用、AC200V用などがあります。本体側面に記載されています、間違った電圧で使用すると破損します。

コイル電圧100Vのマグネットスイッチ

次にコイル内に発生した磁力は空気中では弱いため中に鉄を置いて磁力を高めています

その発生した磁力により、可動接点側の積層鉄心を引き寄せます。磁力によって引き寄せられた可動接点により、固定接点(端子台)と可動接点接触して電気の経路が出来る仕組みです。

コイルに電圧をかける前の状態
コイルに電圧をかけて磁化し、マグネットスイッチがONの状態

コイルに電気を流して磁力が発生している間のみ接点は閉じています。またマグネットスイッチをオフにしたい場合はコイルに流していた電気を止めることで、磁力がなくなりバネの力と合わせて接点が開放されます。

このようにコイルに電圧をかけるorかけないによって接点の開閉を行います。

電磁開閉器

ここで電磁開閉器についても簡単に解説しておきましょう。電磁開閉器はマグネットスイッチにサーマルリレーが付いたタイプのことを指します。

使い方はマグネットスイッチの2次側に接続して使います。突起があり引っ掛けて端子台で締めるだけで使用出来ます。

電磁開閉器はモーターの故障過負荷運転の際に電気を勝手に遮断してくれるためマグネットスイッチやモーターが故障するのを防いでくれる役割があります。スペース的には大きくなってしまうため、必要な箇所にはマグネットスイッチとサーマルリレーを設置すると良いでしょう。

マグネットスイッチの使用例

私の経験では主に3相モーターに用いられることが多いですが、ヒーターの入り切りや、ブレーカーのすぐ下にマグネットスイッチを設置して主電源の入り切りなどにも用いられます。

例えば3相モーターをマグネットスイッチで入り切りして使用する場合、マグネットスイッチのオンオフでは正確な位置決めは難しいため、マグネットスイッチは搬送コンベアや回転体などのある程度惰性で回っても良いところに用いられることが多いです。

使用例としては大型モーターのスターデルタ起動にも用いられることがあります。始動電流を下げるためにスターデルタ起動というモーターの始動方法があります。

またヒーターの温度制御などに用いる場合にはマグネットスイッチの入り切りの回数が増えるため寿命が短くなりがちなので注意が必要です。

マグネットスイッチの故障

マグネットスイッチも故障や劣化することがあります。接点の開閉頻度や接点に流れる電流によって寿命は大きく左右されます。マグネットスイッチの故障パターンは主に2つあります。

接触不良

マグネットスイッチがダメになるパターンの王道が接点不良です。接点不良が起こると接点不良の1相に電気が流れなくなります

通常3相で使用することがメインのマグネットスイッチですが、そのうち1相が不良になると他の2つの経路のみ電気が流れて単相になってしまいます。例えばモーターの場合、3相モーターに単相で電気を加えると、回らなくなったり、速度がおかしくなったり、まれに逆回転することもあります。

このように接点不良が起こるには2パターンあります。ひとつは頻繁に入り切りを繰り返して接点が荒れる場合、もう一つは使用期間が長いこと(たくさん使用したこと)による劣化です。

モーターの場合には短時間に何度も入り切りすることは少ないかもしれませんが、ヒーターの温度制御をマグネットスイッチで行なっている場合には接点不良が起きやすいです。

もう一つの劣化に関してはある程度仕方ない部分もあります。接点が何度も接触することで多少なりとも摩耗してくるため、接触が悪くなっていくためです。

この場合マグネットスイッチを交換するor接点を修正するという対応が必要になります。対処法については次の項でお話しします。

焼き付き

接点不良と別の故障パターンとして接点が焼き付くことがあります。これはマグネットスイッチがOFFしても接点が繋がったままの状態になることです。

高い負荷電流で接点の入り切りを繰り返していると、接点部分が発熱し溶けることがあります。実際にマグネットスイッチがオンオフする際にピカッと光が見えることがあります。まれに火花のように見えることもあります。光るほどの熱が加わっているため、接点部分が溶けて、くっついてしまうことが起こります。これを溶着した焼き付きしたと呼びます。

この状態ではマグネットスイッチの2次側の1相に電圧がかかりっぱなしのため危険です。例えばマグネットスイッチとモーターが離れた場所にあり、途中で中継BOXなどある場合に「モーターが回っていないから電気が来ていないはず、モーターを交換しよう!」などと触ってしまうと感電します。焼き付きが起きた場合にも迅速にマグネットスイッチを交換したいところです。

故障の対処法

基本的にマグネットスイッチの不良が確認された場合にはマグネットスイッチそのものを交換するのが1番手っ取り早いです。マグネットスイッチも消耗品という捉え方も出来るため交換するのが1番確実です。

マグネットスイッチは比較的小型のタイプで1万円を切るくらいの価格帯です。

ただし予備の在庫がない場合や節約したい場合などの対応方法もあります。ここからは交換しない対処法をお話しします。

接点の修正

ここまで接点の話をしていましたが、実は固定接点は外すことが出来ます。端子ネジを外した後マイナスドライバーでこじる等して思いっ切り引っ張ることで外すことが出来ます。接触不良の場合などには接点を一度外して荒れた部分を研磨したり磨くことで再使用することが可能です。ちなみに固定接点が外れることは言いましたが可動接点も外すことが可能です。クネクネと引っ掛かりを外すことで取り外すことが可能です。接触不良の場合磨けば使用出来ますが、焼き付きの際は焼き付きを外すことが出来れば復活することが可能です。ガッツリ焼き付いてしまった場合にはマグネットスイッチそのものを交換する必要がありそうです。

コイルの交換

もう一つ、予備と交換するところと似ている話があります。ここまでの構造や仕組みの話の中で勘の良い方ならお気づきかもしれませんが、コイルは外すことが出来ます

例えばここまで登場している画像の「富士電機 SC-N2」にてマグネットの不良があり、交換したい場合。コイル電圧100Vを使用していて、在庫や予備がコイル電圧200Vしかなかった場合に、一度分解してコイルのみ中古を転用して交換するという手があります。同じ容量のマグネットスイッチがあれば、コイルのみの交換で応用が効きます。

つまり不良品のマグネットスイッチを捨てる前にコイルだけ取っておくという手も使えます。ただし交換に手間がかかるためマグネットスイッチを丸々交換する方がラクです。緊急事態用としてコイルを保管しておくくらいの心持ちの方が良いでしょう。

リレーとの違い

コイルが磁化して接点が閉じて電気を流すという点においてはマグネットスイッチとリレーはほぼ同じ機能を持っています。では何が違うかと言うと…リレーとマグネットスイッチでは流せる電流が大きく異なります。リレーはMY4Nでは最大5Aほどですが、マグネットスイッチの場合約30A〜と大きくなります。ただし機器の物理的な大きさという点ではマグネットスイッチは配電盤の中でスペースを取ります。

基本に帰り、マグネットスイッチはモーターやヒーターなど動力系の入り切りに用いる、リレー電気信号の入り切りに用いることがやはりメインの使い方になります。

またリレーとマグネットスイッチを比較するとコイルに電圧が加わってから接点が閉じるまでの時間ではやはりリレーの方が瞬間的に速いです。同じような機能だからと言っても使い分けは重要です。そのことから分かるようにマグネットスイッチの補助接点を使用することはありますが、瞬間的な速さではリレーに劣ることは頭に入れておくと良いかもしれません。

リレーについての記事はこちらから↓

マグネットスイッチの種類

この記事ではここまで「富士電機のマグネットスイッチSC-N2」で説明してきましたが、世の中には様々なメーカー各社からマグネットスイッチが販売されています。

一例を示しておきます。左から富士電機三菱電機シーメンスとなっています。メーカーによっては分解してコイルの入れ替えなどは出来ないようになっているタイプもありますので注意が必要です。

左から富士電機・三菱電機・シーメンス

ここまで通常タイプのマグネットスイッチでしたが少しばかり珍しいタイプのマグネットスイッチもあります。マグネットスイッチが2個隣並びになったようなタイプです。このタイプは左右のマグネットスイッチが決して同時にONしないような仕組みになっています。

使用例で言うと昇降機の上昇下降など、一つのモーターで正転・逆転をする場合に用いられるタイプになります。もしマグネットスイッチを2個単純に用意すると接点の焼き付きなどが起きた場合に短絡してしまいます。そのような事故を防止するために2個隣並びで同時ONしないタイプなどが存在しています。

まとめ

マグネットスイッチの知識が少しは増えましたでしょうか?構造や仕組みが分かれば故障しても怖くありませんね!
2個横並びで同時ONしないタイプなどは知らない人は知らないので、教えてあげると喜ばれるかもしれません。
ここまでじっくり読んでくれたあなたはもうマグネットスイッチ博士です。明日からは知らない人に説明してあげることが出来ますね!

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