こんにちは技術者けんです!今回はFA業界で使われているインバーターについて紹介します。インバーターという言葉は一度は聞いたことあるかもしれません。インバーターはモーターの回転数を変える際に用いられることがメインです。他にも色々な機能があるので確認してみましょう!
インバーター
インバーターと聞いて何を思い浮かべますか?最近ではインバーター付きの家電なども多く出ています。
ではインバーターとは何なのかというと、「直流の電源や周波数の異なる電源から別の周波数の電気を作り出すことが可能な仕組み」になります。何を言っているか分からないという人のために簡単に説明しましょう。
インバーターは簡単に言うとモーターの回転数などを変えることができます。
つまり家電でいうと洗濯機では洗いと脱水などでモーターの速度を変えて適切な回転数で使用したり、エアコンでは自動運転で部屋の温度に合わせてモーターの回転数を変えたりして使用することができます。
モーターの回転数を変えられるとメリットがいくつかあります。家電では常にフルパワーで動かすことがなくなるため節電や節水効果があります。また常にフルパワーで動くわけではないので騒音も小さくなります。
逆にインバーターのない家電を考えてみましょう。最安値帯の電子レンジなどではインバーター機能がありません。そのため「東日本専用」や「西日本専用」などという家電が存在します。
何が違うのかというと東日本と西日本では電力会社が作っている電気の周波数が違うのです。東日本では50Hz(ヘルツ)で西日本では60Hzの電気を作っています。安い家電などでは異なる周波数の電源に対応できないため東日本専用などの注釈が付いてしまうことがあるのです。
FA業界インバーター
ここまで一般的なインバーターの話をしてきましたが、ここからは工場やプラントなどで用いられるインバーターについての話をしていきます。
工場やプラントなどは一般的にFA業界と呼ばれています。FA業界とはFactory Automation(ファクトリーオートメーション)の略で日本語にすると工場自動化になります。つまりインバーターも工場自動化の機器のうちのひとつになります。
では工場などではインバーターはどのように使われるのでしょうか?
工場には数えきれないほどのモーターが使用されています。工場でもインバーターはモーターの回転数を変更するために用いられることが多いです。
例えばコンベアの速度を変更して物をゆっくり運んだり、製品をかき混ぜるための機械ではかき混ぜる速度を変更したりします。そのようにして工場やプラントでは多くのインバーターが用いられています。
インバーターで出来ること
さて少し先にモーターの速度を変えられる話が出てきましたがインバーターでは何が出来るのか確認してみましょう。
速度変更
インバーターを導入する一番の理由が「速度の変更をしたいから」になるでしょう。工場やプラントで用いられている一般的なモーターは3相200Vがほとんどです。そのようなモーターの回転数は周波数によって決まります。
例えば60Hzで1分間に30回転のモーターがあったとするとこれを120Hzに変更することで約2倍の回転数で使用することが出来ます。もしくは30Hzに変更することで約半分の速度で使用することが出来ます。
このように周波数を変更することで速度を変更するのはV/F制御と呼ばれ、ユーザーは周波数を指定してあげることで電圧と周波数の比を保ちながらインバーターの中で勝手に最適なバランスに変更してくれます。それにより気軽にモーターの回転数を変えることが可能になっています。
正転・逆転
インバーターでは簡単に正転・逆転させることが可能です。私が主に使用している三菱のインバーターFR-E700シリーズではSTRとSTFという名前の端子台があり、それとコモンの端子台を短絡するだけで右回転か左回転か気軽に変更することが出来ます。
例えば物を上下させる仕組みをモーターひとつで行った場合、モーターの回転方向を逆にすることで上昇や下降が可能になります。
加速・減速時間の調整
インバーターの特徴として速度の変更が出来る話をしましたが、速度変更の延長として加速時間や減速時間の調整を行うことが可能です。
例えばモーターを始動させる時にインバーターを用いないと3相モーターの始動電流はとても大きくなります。始動電流が大きいとモーターを始動する際にサーマルトリップすることもあります。
加速時間をゆっくりにすることでモーターは低い電流から徐々に回転数を上げていくことが出来ます。一瞬でも高い電流(始動電流)が流れないことで、モーターやマグネットスイッチの劣化を防ぐことにもつながります。
外部運転
ここまでモーターの速度の変更や加減速について話してきましたが、インバーターには便利な機能がいくつもあるのでその中でもよく使う外部運転について紹介しておきます。
外部起動
インバーターには本体に運転と停止用のスイッチが付いています。しかし毎回モーターを回転させるために人がスイッチを押しに行くのは面倒です。
例えばコンベアひとつ運転するだけならスイッチを押しても良いのですが、実際の機械ではそうはいきません。コンベアを回すと同時にランプが付いたり、製品が流れている時のみモーターを運転するなどなど…そのためインバーターは外部起動出来るようになっています。
外部起動出来るということはシーケンサーの出力でインバーターをオンオフすることが可能です。つまり好きなタイミングでモーターを回すことが可能になります。例えばシーケンサーで回路を組めば1分間モーターが回って1分止まりまた1分間回るような仕組みを作ることができます。何かを攪拌したりする時に用いたりします。
外部速度変更
外部から起動することが出来る話をしましたが、外部から速度を変えることも可能です。例えばシーケンサーに接続してタッチパネルから速度を指定することでインバーターに直接触らずとも速度の変更が可能です。
また簡単な方法としては別で取り付けたツマミを回して速度の変更を行うことも可能です。ツマミ(可変抵抗)を回すことで速度の最大値を設定しておくと回した具合により速度を変更することが出来ます。(細かく速度の調整をしたい場合には向きません)
インバーターのメーカー各社
三菱電機・安川電機・富士電機などが代表的な電機メーカーとして各社からインバーターが発売されています。インバーターの大きさや機能から好きなメーカーを用いるのが良いでしょう。
ちなみに私の会社では三菱のインバーターが多く使用されており、三菱のインバーターに慣れているので三菱がお気に入りです。
三菱インバーターの種類
私の使い慣れている三菱のインバーターについて簡単におすすめします。
FR-D700シリーズ
とりあえずインバーターを導入してモーターの速度の変更をしたい時など、簡単な操作を行いたい時はまずはコレ。小型でインバーターの一般的な機能を有するタイプで三菱電機の中では安価なタイプになります。Eシリーズの安価版という捉え方も出来ます。
FR-E700シリーズ
Dシリーズの上位互換で標準的なタイプのインバーターです。とりあえずインバーターを設置したいけど、後々他に転用する可能性があったり、別の機能を使いたくなる可能性があるならEシリーズがオススメです。DシリーズとEシリーズで迷っているならEシリーズを設置しておくことがベストです。
CCリンクなどオプションの取り付けで外部との接続が容易になっています。私の工場で操作盤を開けるとよく見かける1番使われているタイプです。
FR-F800シリーズ
このシリーズは高機能でEシリーズより高性能になっているイメージです。Fシリーズは省エネをアピールしていることから省エネ省電力でのモーターの運転が可能です。
ラインナップの容量的には大きなモーターやファンを回すことを想定しているようで、工場内の設備というよりかは建屋のファンなど大きなモーターなどを使用している箇所に設置すると省エネ効果がありそうです。またEthernet通信にも対応していたり、三菱のタッチパネルと簡単に接続することが可能で拡張性に優れています。
FR-A800
Aシリーズは三菱のラインナップの中で最高性能のタイプです。トルクと回転数の応答性が良い点や防水性能IP55の規格に適応している点が最上位機種と言えます。ただし、ここまで来ると価格が上がってしまう点は性能に対して難点とも言えるでしょう。
おまけ
最後に家庭内でも簡単に100Vから200Vの電源を作れる方法を教えておきます。三菱FR-Eシリーズを例にとって説明します。家庭内でとは言いましたが工場などでも1次側の電源の都合がつかない時に便利な方法です。
三菱FR-Eシリーズは三菱FR-E720-0.4Kなどの型番になります。この型式はE700シリーズの3相200V用でモーター容量0.4キロワットということになります。
実は100Vから200Vを作れるタイプがあり、FR-E710W-0.4Kなどとなります。このタイプは入力電圧単相100Vから3相200Vを出力することが可能です。例えば家庭用コンセントから電源を取り、3相200Vのモーターを動かすことが出来ます。
ただし実際に家庭での使用を考えるのであれば電気工事士の資格が必要です!持っていても損はないので、電気工事士の資格はオススメです。受験費はちょっと高いですが挑戦しておく価値はあります。